業務(ビジネス)プロセス改善のためにどんなステップを踏めべ良いでしょうか?考えてみたいと思います。
例えば、あるローン会社であるA社では従来下記の手続きでローンを受け付けていたとします・・・
どのような改善点が見つかるか? 考えてみてください。
営業担当者は複数人いると仮定します。
1. 営業担当者がローン希望者を見つける
2. 営業担当者はローン希望者から申込書を受領する
3. 営業担当者は申込書をチェックし必要な項目を記入する
4. 営業担当者は申込書を審査部門に渡す
5. 審査部門は審査に必要書類(所得証明書など)を点検する
6. 審査部門は営業担当者に審査の進捗状況に合わせて、都度、必要書類をローン希望者から受け取るように依頼する。
7. 営業担当者はローン希望者に必要書類の提出を求める
8. ローン希望者は書類を用意して営業担当者に渡す
9. 営業担当者は書類を審査部門に渡す
改善案の候補
1.
ローン・コーディネーター(1~2人)を置く
コーディネーターは、受け付けた申込書の不備や追加書類の請求などを取りまとめて行う。
2. 申込書受付時に必要な書類の「一覧表」を用意して、予め顧客に渡す。
そうすることにより、複数人いる営業担当者は受付完了後、追加書類の徴求などに時間を取られずに済むようになり新規の営業活動に集中できますし、顧客も予め必要書類を準備してコーディネーターを窓口として必要なタイミングで提出することが出来るようになります。
しかし、前提として、顧客に申込書受付時点で「一覧表」を渡し書類一式を準備する手間をかけさせても顧客の不満として問題にならない程度の低い「謝絶率」であることが必要です。謝絶率の高い状況でこの改善案を実施すると、顧客が「たくさん書類を準備して出したのに断るのか?」と不満につながったりするリスクもあります。
さて、この事例の改善案の内容はさておいて・・・どんな手順で改善案を検討したらよいでしょうか?
1.
検討チームを立ち上げる
改善案をひねり出すためには、まず検討チームの編成が必要です。チームリーダーは課題を抱えていると感じている組織のリーダーが適切です。所謂「言い出しっぺ」ですね。上記の例で見てみましょう。上記の例ではまず検討チームのリーダーは営業部門のリーダー格の人物、そしてメンバーも営業部門から2~3名選抜します。加えて、審査部門にも協力を依頼しましょう。全体で5~6名のチームにします。これはブレインストーミングを行うのに適切な人数です。
関係する部署の数が多いケースでは適宜人数を増やします。それでも7~8名がブレインストーミングの限界です。
現行のプロセス(AsIs)をモデル化する
現行の業務プロセス(AsIs)をモデル(図)にして、関係者と内容が正しいことを関係者と確認した上で、事前に検討チームのメンバーに配布します。
上記のローン会社での現行プロセスの事例です。
1.
ブレインストーミングの準備をする
ブレインストーミングの準備については、2022年3月15日のブログ「ブレインストーミングと親和図法」をご参照ください。
1.
問題意識を共有する
ブレインストーミングを開始するに際して、リーダーはファシリテーターの役目を担います。
最初に問題意識のポイントを2~3個メンバーに伝えて共有します。ブレインストーミングの目的は意見の「発散」なのでポイントは少なめにします。そうすることでメンバーが提示されたポイントに縛られず自由に発想を飛躍させるように導くことができます。
2.
現状の「問題プロセス」を集める
ブレインストーミングの最初には「問題プロセス」についてメンバーから意見を募ります。まだ、この段階では「改善案・対策」まで話が広がらないようにファシリテーターはリードして行きます。改善案や対策まで出してしまうと話が拡散して会議としてまとまらなくなってしまいます。
メンバーは思いついた「問題プロセス」をポストイットに書き、声を出してメンバー全員に伝えます。ファシリテーターはホワイトボードに貼り付けます。
問題プロセスの掘り起こしが一巡したら「親和図法」を使って、グルーピングとまとめを行い、まとめに沿って原因まで掘り下げます。この時、「誰が悪い」などに飛び火しないようにファシリテーターは配慮しながら会議をリードします。
現状の問題プロセスについてのブレインストーミングが完了したら、結果を文書にまとめてメンバーに配布し、次のブレインストーミング「改善案」のアイデアを考えておくように依頼します。
3.
「改善案」を議論し選抜する
1回目(問題プロセス集め)のブレインストーミングから2~3日以内に「改善案」のブレインストーミングを行います。あまり間が空いてしまうとメンバーの熱量も下がってしまうのでなるべく早く2回目を開催します。ブレインストーミングのやり方は前回と同じです。
「改善案」のブレインストーミングでは前回議論した「問題プロセス」と「その原因」につきの改善案を議論します。メンバーはそれぞれ意見を発表しますが、この時ファシリテーターは「どのような、良いことがあるか?」例えば、「顧客に喜ばれるか」「時間を節約できるか」「コストを削減できるか」「その程度は」など施策のメリットについてもメンバーに議論を求めるようにします。すでに初回のブレインストーミングでテーマをまとめてあるので「改善案」では議論が大きく発散する可能性は高くありません。改善案が揃ったところで、ファシリテーターは各施策の「効果」「実現性」などを切り口にして優先順位づけをメンバーにしてもらいます。そして会議の終わりに採用する案を全員の合意を醸成して決定し、文書にまとめます。
机上シミュレーション、ロールプレー
5.でまとめた「改善案」を反映した改善後(ToBe)の業務モデル(図)を作成します。(ビジネスプロセス・モデルについては2022年3月9日のブログ「ビジネスプロセス・マネジメントとは」をご参照ください。)
更に、冒頭のローン業務の例にある「書類の一覧表」のような新しく作成する「新様式」などもサンプルを作成しておきます。
そして、関係部署から代表を集めて新しい業務プロセスでの机上シミュレーションやロールプレーを行って期待した効果が得られることを確認します。
上記ローン会社の改善後のモデル例です。
1.
新業務プロセスが、会社の組織、従業員、顧客、システムに与える影響を確認・検討
●新しい業務プロセスによる組織的関係の確認ポイント
組織的側面 |
新しいプロセスでは、(以下の対応)が必要だろうか。 |
組織構造 |
新しい仕事、部門、またはレポートラインの新設、または既存の構造の大きな変更? |
従業員 |
従業員を教育したり、新しい人材を雇用することによって習得しなければならない新しいスキル、知識、および専門知識? |
顧客 |
再設計されたプロセスを顧客に知らせ、顧客がそれを利用できるようにするための新たなマーケティング計画やその他のコミュニケーション? |
ITシステム |
新しいITインフラなど、まったく新しいシステム、または既存のシステムの大幅な変更? |
2.
経営層の承認と新業務プロセスの実施
上記の経緯と結果を経営層に報告(エスカレーション)します。新プロセスに関わる「7.における検討結果」として、組織全体として対応すべき場合には経営層に諮って新たな大規模なプロジェクトを企画します。特にITシステムが絡むものは要注意です。
組織全体に及ぼす影響が小さく、限られた範囲ですぐ実施できるものであれば、経営層の承認を得て「業務プロセス」や「業務マニュアル」を変更し、関連部署に新業務プロセスを徹底して速やかに移行します。
3.
移行後のモニタリング
移行が完了した後は、「新業務プロセスが正しく運営されているか?」「新業務プロセスに起因する新たな問題は発生していないか?」など、定着まで慎重にモニタリングを行います。