業務プロセス(ビジネスプロセス)って何だろう?A005

「業務プロセス」とは、仕事を行う上での「工程」を指します。

業務プロセスは、原則以下の要素で表現されます。

1.     Input
ある工程を実行する上で、その工程の元となる(入力される)「モノ」「コト」です。

2.     Output
ある工程での処理が行われ(付加価値が創造され)た結果として作り出される(出力される)
「モノ」「コト」です。

3.     業務ルール(ビジネスルール)
Input
Outputに変換する(価値を付加する)ために定められたやりかた。
「どこの」「誰が」「どんな手順で」等が定められます。

 

下の図のような構造になります。

この図だけでは、まだ、ピンと来ないと思いますので、事例を当てはめてみましょう。

自転車を組み立てる工程では、部品としてフレーム、ハンドル、ホィール、タイア、ギア、チェーン、ブレーキなどが部品として準備されます。これがInputです。そして、製造部の田中一郎さんが組立手順書に定められた方法で「組立」を行い自転車が出来上がりOutputをして出荷されます。

 

その流れが下図になります。

この「業務プロセス」では、「組立」を1つのプロセス(工程)として表現していますが、「組立」というプロセスは、実は、複数のサブプロセスから成り立っています。

サブプロセス1:

フレームとタイアをInputとしてフレームにタイアを装着する活動により中間品(第1段階)を作る。

サブプロセス2:

中間品(第1段階)とギアをInputとしてそのフレームにギアを装着して中間品(第2段階)を作る。

サブプロセス3:

中間品(第2段階)とチェーンをInputにして中間品(第2段階)にチェーンを装着して中間品(第3段階)を作る。

サブプロセス4:

中間品(第3段階)とハンドルをInputとして、ハンドルを装着して自転車が完成する。

 

このサブプロセスではもちろん不十分ですが、「組立」という作業はいくつかのサブプロセスから構成されていることを表現しています。

上記の例では、1階層の構造化を行いましたが、さらに深く構造化することができます。例えばフレームにタイアをつける手順で①フレームを作業台に置く、②タイアをフレームの所定の場所に仮止めする③仮止めしたタイアとフレームに心棒を挿入して固定する・・・・などですが、イメージを持って戴けたでしょうか?

 

このように大くくりなプロセスを、詳細なプロセスに分解することを「構造化」と呼び、物事の全体を定義した上で「構成要素」と「構成要素間の関係」を整理する作業です。そして、この「くくり方」の大きさを「粒度(りゅうど)」と呼びます。

粒度はたいへん重要な要素ですので、ぜひ覚えておいてください。上の例では同じ自転車の製作工程についての話しでも粒度が異なると話しがかみ合わなくなってしまいます。

 

 

システム開発を行う場合、一般的に企業・組織の構造に合わせて以下のように階層レベルを設定して検討します。しかし、対象となる組織構造が異なったり、プロジェクトが変わることにより階層レベルの設定も変わりますので一般論として覚えておいてください。

業務プロセス階層の概要

階層レベル

内容

粒度の例

レベル1

(経営)

事業を推進するための事業機能

および支援機能

(経営戦略のレベル)

事業における最上位の機能粒度

・事業機能:販売、生産、調達、物流など

・支援機能:人事、経理など

レベル2

(部)

経営戦略の実施方法を定義した

もの。(部単位の機能レベル)

販売、生産、人事などレベル1の機能を1段階

構造化し実施方法を定義したもの。

レベル3

(課)

事業実施機能の中核となるレベルで

業務プロセスが具体化される。

販売を例にとると、受注・在庫・仕入・出荷

請求などの各プロセス

レベル4

(係)

レベル3の業務プロセスがさらに

1階層構造化されたレベル

受注を例にとると、受注受付・在庫照会・

在庫引当等の業務処理プロセス

レベル5

(担当者)

担当者レベルでの具体的行動が

示されるレベル

受注受付を例にとると、注文受領・取引条件チェック・注文データの登録等の下位の業務プロセス

レベル6以下

作業手順のレベル

システムの操作手順、保存書類の保存手順、システム内のロジック等のプロセス

 

 

経営のレベルであるレベル1は、組織全体を展望しており表現される機能も抽象度が高く(=粒度が大きく)なります。レベルが下がるにつれて具体性が高まり、粒度が小さくなります。

今回は、「業務プロセス」と「プロセス階層」そして「粒度」についてお伝えしました。

 

システム開発における要件定義は、抽象度の高い経営要求を構造化手法によって具体化し、最終的にソフトウェアのコードに落とせるところまで具体性を上げることです。勿論、ユーザのみですべての作業が出来るわけではありません。IT部門やITベンダーの協力が必要ですが、今回説明したことが共有されていることにより効率的なコミュニケーションの基本となります。ぜひ、理解しておいてください。